土地が足りない その3

念のため、知り合いの土地家屋調査士にお願いして現地を測ってもらいまし
たが、結果は・・・・・やはり、お隣りの塀がこちら側に越境してます。

とはいえ、隣地の方全員が立会って境界を確定させたわけではありません
ので、この段階で越境と決めつけるわけにはいきません。

※測量は、隣地の立会いをせず、単に現地の寸法を測るだけの現況測量
 と、道路管理者および隣地の方全員が立ち会って境界を確定させる確定
 測量とがあり、通常、測量とは確定測量のことを指します。

その場で、土地家屋調査士に確定測量をお願いしました。
隣地立会いを行うには、現地調査や書類確認等で二週間ほどかかるようで
す。

「やはり越境は間違いないでしょう。塀を基準に測ると南側の方の敷地は
登記簿より5坪ほど多くなります」
土地家屋調査士からの報告は、予想通りでした。

「それでは、さっそく隣地の方に立会いをお願いしてみます。日程が決まりまし
たら米本さんにも連絡いたしますから」

「よろしくお願いします」

それから一週間、いまだに調査士から立会日の連絡がきません。

「どう、日程は決まりましたか?」
しびれを切らし、調査士に連絡を入れてみたところ、

「南側の人のことなんですけどね、なんどお願いしてもだめなんですよ。そんな
の必要ないの一点張りで・・・他の人は全員日程が決まったのですが」

さて困りました。いちばん肝心な人がそんなことを言うなんて・・・

「先生、電話で無理なら直接会ってお願いしてみましょうよ。わたしも一緒に
行きますから」

売主さんにもお願いして、調査士、わたし、売主さんの三人で、訪問すること
になったわけですが・・・

「こんにちわ、野田です。ちょっとお話しがあるのですが」
まずは、お隣り同志ということで、野田さんに声をかけていただきました。

「じつは今回、自宅を測量することになってね。みなさんにその立会いをお願
いしているところなんですよ。悪いけどお宅も立会ってもらえませんかね」

「測量? 立会い? そんな面倒くさいこと・・・測りたきゃぁ勝手に測ればいい
んじゃないの」

かなり非協力的です。いえ、敵対心丸出しといったほうが正しいかもしれません。
ひょっとしたら、この方、自分が越境していること承知しているのでは?と勘ぐっ
てしまいます。

「いえ、そういうわけにはいかないんですよ。他の方たちはみなさん立ち会って
いただけるんです。お願いします」

「だれ?あんた」

「申し遅れました。米本不動産の米本といいます。今回、野田さんの家の売却
を頼まれまたものです」

「野田さんの売却と測量の立会いがどう関係あるんだ!」

「不動産の売買は境界を確定するのが常識なんです。今回、お宅様との境に
境界がないものですから、それで測量することになったのです。測量は隣地の
方、全員に立ち会って頂くのです。他の方たちは、すでに了承していただいて
います」

「「だれだ、他の人って?」

「お宅様を除いた隣地の方、全員です」

「わかっとるっ。俺は名前を聞いているんだ!名前を言え名前を!」

 なにもそんなに怒ることじゃないんだけどな・・・

 そんなかんやと聞く耳を持たなかったお隣りさんも、さすがにバツが
悪くなってきたのか、

「いつ、測量するんだ! 俺にも都合があるからな」

「そうですよね。ご都合のいい日はいつでしょうか?」

・・・・・なんとか立会日も決まり、ほっと一息です。

それから数日後、いよいよきょうは立会日です。

土曜の昼下がり、あいかわらずきょうも強烈な日差しで、暑さは半端でありま
せん。

道路との境界は、すでに役所の道路課の方が立ち会い済み(官民立会い)で、
なにも問題もありませんでした。

残るは、隣地の方との立会い(民民立会い)です。

みなさん、自分たちの土地を守らなきゃっていうことで真剣な表情です。

土地家屋調査士がひとしきり説明したのち、境界をひとつひとつ確認して
いきましたが、これもとくに問題もなく確認していただけました。
ただおひとりだけ除いて・・・そう、南側の方です。

「この塀はなぁー、俺が建てたんだよ。それは野田さんも知っているはずだ!」

土地家屋調査士がなんど説明しても、自説を曲げようとしません。

「わかっています。建てたのはお宅様だってことは。でも、その位置が問題な
のですよ。測量の結果からいけば、野田さんの敷地に塀が建っているんです
よ。つまり、お宅様が越境しているってことなんです」

土地家屋調査士は、測ることだけでなく折衝力も必要です。

「どこの世界に、他人の敷地に自分の塀を建てるバカがいる!」

「いえ、現実はこうなっているんですよ、って申し上げているんです」

「とにかく、なにをいわれても越境なんかしておらん!気分が悪い!帰る!」

そう言い残して、お隣さんはすたすたと帰ってしまいました。
まったく話もあったものじゃありません。 いったいどうなるのやら・・・                             

 

                     

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