Q 隣地の木の枝が、年々、私の土地へ伸びてきて私の家の屋根に
 かかるほどになったので、先日、こちらで切り取りました。
 すると「大事に育てた木なのに、どうしてくれる」と隣人が文句
 を言ってきました。

 私としては、越境している枝を切っただけで文句を言われる筋合い
 はないと思いますが、いかがでしょうか?



あなたの気持ちはよくわかりますが、残念ながらトラブルに対する
 心遣いが欠けていたようです。


 まず、法的な定めからいいますと、木の枝が越境しているからと
 いって勝手に切ることはできません。



 勝手に越境してきたのだから、切ってもかまわないと思いがちですが
 たとえば、家に侵入してきた泥棒を勝手にぶん殴ったりして良いで
 しょうか。そうではありませんよね。
 木も勝手に切るわけにはいかないのです。



 では、どうすれば良いでしょうか?


 民法では、木の所有者に切らせることができると定めています。



 つまり、自分では勝手に切ることはできないが切ってくれと請求は
 できるのです。



 ただし、木の所有者に対してですから、隣地の借地人が木を植えて
 いるような場合は、その借地人に請求するのであって隣地の地主では
 ありません。



 あなたが勝手に枝を切ってしまったのは、残念ながら違法です。
 責任を追及されてもやむを得ないでしょう。



 ところで、あなたは法を知っていれば、まず相手に枝を切るように
 求めたと思いますが、知らないがために今回のようなことになった
 のは致し方のないことかもしれません。



 とはいえ、法を知っている、知らないとは別に、あなたには「紛争を
 起こさないように」という配慮が欠けていたのではないでしょうか。



 相談もなしに、いきなり枝を切られれば誰だって良い気持ちはしません。
 まずはやんわりと申し入れてみるべきでした。



 この意味でいえば、仮に切っても良いとされている根っこも同じです。



 いちおう切るように申し入れ、切るのが手間であるなら自分の方で
 切っても良い旨、申し添えるくらいの配慮があってもいいでしょう。



 なお、木や枝が越境していなくても、落葉で雨樋が詰まってしまう
 などの被害が発生する場合は、木枝の切除を含めた適切な管理を隣家
 に対して求めることができます。