.先日、良い物件が見つかり、購入する決断をしました。
  その際、不動産会社の方から「買付証明書を書いてほしい」
  と言われので提出しました。

その後、売主から売渡承諾書なるものが交付され、契約日も
  決まりました。
 しかし、その後、考えが変わり、その物件を購入するのは中止
 したいと思います。

 この場合、わたしに、なにか責任が及ぶのでしょうか?

 付証明書とは、不動産の売買において買い受け希望者が
  当該物件を買い受ける意思があることを表明する書面のこと
  をいいます。

   これに対し、売渡承諾書とは、買い受け希望者に対して当該
  物件を売り渡す意思を表明する書面のことをいいます。

  買付証明書は、買い受け希望者が買い受け希望金額と条件等を
  記載して、この条件であれば契約を締結することが可能である
  との意思を明確にする趣旨の書面です。

  これに対し、売渡承諾書は、売主が売り渡し価格と条件等を記載
  して、この条件であれば契約を締結することが可能であるとの意思
  を明確にする趣旨の書面です。

  不動産取引の実務では、購入希望者は買付証明書を提出後に、詳細
  な条件を詰めて売買契約を締結することが少なくありません。

 民法の原則によると、契約は当事者間の申込みと承諾により成立する
 ものとされていますが、現在の判例としては、このような買付証明書
 や売渡証明書には、原則として契約の申込みや承諾の効力を認めてい
 ません。

 したがって、その後、売買契約の締結に至らなかったとしても、当事
 者双方は相手方に対して売買契約に基づく義務(不動産の引渡義務や
 売買代金の支払義務等)を負うことはありません。

 今回のケースは、単に書類の交付だけに留まっていることからして、
 あなたに責任が及ぶことはないと思われます。

 では、買付証明書・売渡承諾書の取り交わしには何らの法的意味はない
 のでしょうか。

 そもそも、買付証明書・売渡承諾書は、互いに当時の合意した事項を
 確認する意味があることは前述のとおりです。

 とすると、一方がこのような書面の取り交わしにより、契約が成立する
 ものと信じ、何らかの行為を行った後、相手方が一方的に撤回すれば、
 当該行為を行った者は損失を被ることもあります。

 この場合、書面上の合意を撤回した相手方に対し、契約締結上の過失が
 あったとして損害賠償請求を求められる可能性があります。

 また、たとえ損害賠償に至らなくても相手方には多大な迷惑を掛けること
 になります。

 どんなに購入の決意が固くても、もう一晩ゆっくり考えて買付証明書を書
 きましょう。
 それで売れてしまったのなら縁がなかったと、すっぱりあきらめることです。