Q 購入した中古住宅に引っ越したところ、近所の人から数年前に隣の家で
  自殺があったことを聞かされました。
 このことは、売主や不動産会社からなにも聞かされていません。
 たとえ、隣の家のこととはいえ、気持ち良いものではありません。
 売主、不動産会社に責任はないのでしょうか



不動産取引においては、売主は買主に対して購入に影響する事実に
 ついて告知義務が課せられています。 


 今回のような自殺事故は言うまでもなく告知事項に該当しますが
 隣接地での事故はどう捉えたら良いのでしょうか。


 嫌悪感の感じ方というのは、人それぞれで気にならない人もいる反面
 強い嫌悪感を抱く人も存在します。 


 買主が隣接地での自殺でも強い嫌悪感を持つ場合、売主の告知義務違反
 ということで、契約の解除や損害賠償の請求をすることは明らかです。



 しかし、一般的に自殺のあった建物の嫌悪感と、その隣地建物の嫌悪
 感とは、その嫌悪感の程度に大きな差があり、隣地建物に心理的欠陥
 といえるまでの嫌悪感はないと考えられています。

 (瑕疵には該当しない)



 そうすると、特段の事情がない限り、たとえ売主が知っていたとしても
 売主に告知義務があるとはいえません。(瑕疵に該当しないものは説明義
 務もないと考えるのが通常である)



 また、当該建物が空き家ではなく居住者がいる場合は居住者のプライバ
 シー等に配慮する必要があり、平穏な生活を害する言動は許されないので
 説明しない方が良いと思われます。 


 ただし、トラブルの未然防止の観点からは、「告知事項」に当たらない
 としても、告知することに支障がなければ告知する方が望ましいのはい
 うまでもありません。



 【裁判所の判断】
     自殺事故が、隠れた瑕疵(※)に当たるか否かについては


    @経過年数
    A事故後の利用状況
    B建物の所在地域(都市部、郊外、山村…)
    C周辺環境 
    D建物の種類・利用形態
    E近隣住民の関心の度合い
    F利用目的
    G取引の経緯


 などを総合的に考慮して判断されます。



 また、通常以上に強い嫌悪感を生じさせる凄惨なものであるときは
 そのことも判断に影響を与えます。



 ※隠れた瑕疵

      瑕疵とは、そのものとして通常有すべき品質性能に欠ける
    ところがあることをいいます。

    隠れた瑕疵とは、買主が通常の注意を払っても知り得なかった瑕疵
    のことで、売主より告げられた瑕疵を買主が知っていた瑕疵は、隠
    れた瑕疵には当たりません。