Qこのたび土地を売却するため測量をすることにしました。
 測量は隣地の方全員の承諾が必要と聞きましたが、そのうちの一軒
 とは以前から仲が良くありません。もし、その人が測量に立ち会っ
 てくれなかったらどうなるのでしょうか? 

 また、測量ができなかった場合は、売却することは不可能でしょうか?



高価な資産である土地を売却する場合、測量図と隣家の境界確認書
 の交付は売主の義務となります。



 それは、土地を譲り受ける人が利用できる権利の範囲を明確にして
 おく必要があるからです。
 登記がしてあっても、現地に境界標がなければその範囲が他人には
 わからずトラブルの元になります。



 また、長い間には、境界標が何らかの障害により移動したり、亡失
 して不明になることがあります。



 そのとき、境界標の位置関係がわかる土地家屋調査士が作製した地積
 測量図があれば、土地家屋調査士に依頼して境界標を元の位置に復元
 することができます。



 測量は後日、問題が起きないように土地の所有者同士が現地で確認
 することが前提となり、立会いのうえ双方が納得すれば、その事実
 を後日に残すため「境界確認書(筆界確認書ともいう)」を作成して
 双方が一部ずつ持ち合います。



 このように測量には隣家の協力が必ず必要となりますので、普段からの
 お隣りとの関係はとても重要です。しかし人は感情の動物。どうして
 も仲良くできないお隣りさんでも、測量のためには低姿勢になって頭
 を下げていただくことになります。



 とはいえ一度人間関係にヒビが入ったものが簡単に修復できるわけで
 ありません。「仲が良くない隣家に協力などしたくない」と思うのは
 自然の摂理です。
 では、立会いに応じてくれない場合は、いったいどうすればいいので
 しょうか。



 登記法では、隣家の同意がなくても法務局が境界線を特定してくれる
 「筆界特定制度」を設けています。



 この制度は、利用にあたって土地家屋調査士に測量費用とは別途に
 費用が発生することと、境界特定までに時間(一年前後)がかかる
 ことが難点ですが、境界紛争を解決するうえの一つの手段となります。



 ただし、この制度に基づく筆界はあくまでも「特定」であって「確定」
 ではありません。隣家が特定された境界に不満があれば、境界確定訴訟
 の訴えを起こすことができます。



 結局、境界を確定することができない土地は、トラブルの有る土地
 と思われても仕方がありません。決して売却が出来ないわけではあり
 ませんが、正常な価格での売却は困難である、と言わざるを得ません。